時間をかけて出た痛みは時間をかけて緩和する

 心の緊張とは別に、構造的な問題で痛みを感じている人も多くいます。構造的な問題で影響をうけるのは関節で、関節の痛みとして多いのは膝です。
『変形性膝関節症』と言われている人はいませんか?
ぶつけて膝のお皿が割れた、十字靭帯を切ったという場合は整形外科に行くべきです。でも関節が変形している場合、なぜ変形してしまって、痛みが出ているのかを考えないと。
私は戸塚にある『カサハラフットケア整体院』に講義を受けに行きました。
笠原院長は柔道整復師です。接骨院の現場に立ち沢山の疑問を抱えて、膝も腰も痛くない人たちのフットプリントを海外まで取りに行っています。そして、日本人は足の指に力を入れず歩いている事に気が付きました。指を挙げて、踵で歩いている。その時の衝撃が膝関節や股関節に影響を与えている。なぜ指を挙げて歩くことになったのか。どうすれば下ろすのか。何十年も関節に衝撃を与える生活をしていたから変形したのではないか。
そこに四十年取り組んでいます。それは胸が苦しくなるような事実でした。
戦後、靴下と履き靴を履きアスファルトの上を歩く生活になりました。裸足で外を歩いている人を見かけることはありません。そして足の裏は守られ、刺激は無く、鈍感になって行きました。踏ん張って歩くことはなくなり、足の指の握力は落ちました。足底反射が反応しなくなりました。踵に体重を乗せ、膝を反らせて立ちます。指先で地面を蹴らず、指の根元で蹴って歩きます。地面を叩く衝撃は反作用として自分に返ってきます。アーチが逆アーチになっていて、衝撃を吸収無害化してくれません。それを何十年も続けます。
笠原先生はそれを『時間経過に伴う痛み』としました。原因の特定できない痛みがそれです。特定などできません。毎日壊し続けているからです。

私の所に来た方で、膝の手術を勧められている人がいました。どうしても手術は嫌だ、他に方法はないのか、と聞きに来てくれたんです。整体師はセカンドオピニオンにもなります。私は物理的に俯瞰して彼女をみました。膝だけを見るのではなく、全体を眺めます。立ち姿でおかしなところがありました。両踝が付かないのです。左足の足首が外側に傾いています。
これは小指側に体重をかけて歩いているという事です。身体全体が傾くのではなく、踝が傾き、踝の上にある脛骨が外側に傾きます。О脚という状態です。それでは膝関節の負担は高くなります。膝だけを手術してもまた痛くなります。
手術はせずに、足の親指の握力を付けるところから始めました。五回、グーパーとするだけで足が攣ります。それでも彼女はコツコツと、一日ずつ回数を増やし、三十回までできるようになりました。足のアーチができるまで、幅の広いゴムを足の甲に付けてもらいました。筋肉が育つまで時間がかかります。タイヤ付きのガラガラバッグを杖代わりに歩いてもらいました。
半年後、痛かった方の脚で片足立ちできるようになりました。
一年後、神戸への旅行に行くことができました。
二年後、ハワイに行くことになりました。
定期健診で訪れる整形外科の先生に「こんな人もいるんですね」と言われたそうです。いますよ、いっぱい。
でもこれは本人の努力あっての事です。筋肉をつけることは整体師にはできません。本人にしかできません。
 足底反射の機能が落ちていると言うと、多くの人は「自分は大丈夫」という顔をします。
「小石が靴に入ったらわかるから」と言いますが、では靴に十円玉を入れてみてください。十円玉の厚みは二ミリです。どうですか? わかりますか?
私のお店に来る人は、わからない人が沢山いました。それでも歩いている内にわかるようになってきます。感覚を使う用になるからです。感覚は無意識で使うものです。その内、靴の中で移動する十円玉を、親指でピタッと止めることができるようになります。
砂の上を裸足で歩く生活ができればいいのですが、夏に海岸に行ってやることはあっても、それは日常ではありません。海の傍で暮らしていたって、日常的にはやらないと思います。私たちは砂の上で暮らしているわけではありません。時々やることを二十四時間やっているように思ってはダメです。