「またここにいた」
ママはひょいと顔をだした。
二階のいつもの場所。
ぼくね、ここ、好きなの。
「知ってるわよ。
何が良いんだろうね、そんなドアストッパー」
ママは肩をすくめてぼくの横に座った。
この良さがわからないなんて、かわいそうに。
ぼくは同情してママを見つめる。
「ねぇ、なーちゃん。
ジャックと一緒に暮らせると思う?」
ママはおもむろに聞いてきた。
きっとパパからジャックと午後のロードショーを一緒に見た話を聞いたんだろう。
ぼくは、わかんない、と答える。
「あたしもわかんない。
ジャックはさ、若いじゃない。
例えばさ、今、あたしが三歳児と一緒に暮らせるかと言ったら
ちょっと遠慮したいわね。
体力がついていかないもの。
自分が産んだんなら倒れてもやらなきゃと思うけど。
なーちゃんとジャックの歳の差はそれくらいあるからね。
トラさんだったら暮らせる気もするんだけど
病院行くの嫌だって言うからなぁ」
ママは唸っている。
ぼくもさ、みんなで暮らしたらそれはそれで楽しいんじゃないかと思うよ。
でも壁の中と外とで分けなくてもいいのかな、とも思うんだ。
彼らは外に居たいと思っているし
ぼくは中に居たいと思っているし
それでも時々話をしたりして
共通の部分が少しあれば、それでいいかな、って。
ふむ。とママは口を閉じる。
あんた、なかなかやるわね
と言ってお尻を突っついた。