いいもの見つけた。
うん、丁度いい。
「これこれ。それは枕じゃありません」
ママが、ぶー、っとふくれている。
知ってるよ。ご本でしょ。
それでもぼくは頭を置く。
「いまでこそ、かの有名な魔女の宅急便だけど
あたしは小学生の時に読んでいたのだぞ。
大事なバイブルを枕にしないで欲しい」
ママは眉をしかめる。
バイブル?
ぼくには意味が分からない。
「生きる指標、って言うの?
女の人が仕事をしながら生きていくっていう話なの。
ほうきに乗って空を飛ぶ、っていう物語じゃないのよ。
女性の生き方を書いた話だもん。
落ち込む日もあるけど、私は元気です、って
良いと思わない?」
ぼくは、ふーん、と思いながら
だからママはママなのか、と思った。
子供の頃に読んだ話がそのままママの生き方になっている。
「更には、作者が今年国際アンデルセン賞を受賞したんだよ。
小さなノーベル賞って言われている賞なの。
80歳過ぎてから受賞なんて、夢があるなぁ。
あたしもがんばろう」
ママはグッと拳を握り、ぼくから枕を奪った。