ウッドデッキに茶色い影。
あ、あの
ご飯が入っていないんですが。
モジモジと動く茶色い影は、しまちゃんだった。
え?ほんと?
さっきママがカリカリを出していたのに。
ママ、しまちゃん来たみたい、とぼくは声をかける。
「ありゃ?
ミミちゃん、全部食べちゃったのか。
しまちゃん遅いよ~」
ママはまたカリカリの袋を取りに行った。
ご、ごめんなさい。
寝坊してしまって。
しまちゃんは、恥ずかしそうに空になったトレーの匂いを嗅いでいる。
いひひ
とママは意地悪く笑っている。
「では、中で食べてもらいましょう」
そういうとママはカリカリを外に出さずに
窓の内側に置いた。
迷った挙句、しまちゃんは身体の半分だけ、中に入ってきた。
黙ってカリカリを食べているけど
耳はピンと立ち周りを警戒しているのがわかる。
そうか。しまちゃんはいつもそうやって
ご飯を食べるのか。
ぼくは胸が痛くなった。
ご飯って、美味しい美味しい、って夢中になれば
隙ができる。
どれだけ周りを気にしながら、しまちゃんが生きているのか。
ぼくとママはしまちゃんが落ち着いて食べられるように
少し離れてそれを見つめる。
ん、としまちゃんは顔を上げ
ぼくたちと同じように、ぼくたちの様子をうかがった。