ママがせっせと洗濯物を干している。
マスクがいっぱい。
「パパちんなんて職場で大人気よ。
やっぱりバナナは可愛いし。
あたしもこれ付けてパン買いに行ったらレジの子に
『それ作ったんですか?』って声かけられて。
もうみんなマスク買うのに疲れて来たんだよね。
元々買ってありましたって人も残りが少なくなってきて
買い足すのどうしようかなって思ってるみたい。
これハンドタオルだから洗濯機で洗えて便利よ。
使い捨てのを洗って使ってる人もいるけど」
ママはパンパンとマスクの皺を伸ばした。
ふうん。いっぱい作っておいて良かったね。
ママは出会う人ごとに配っていたから
作ったほどは干されていない。
「あげた人が使うかどうかはわからないけど
心の保険になるんじゃない?
布のも持ってるし、って。
やっぱり使い捨ては医療現場に届いて欲しいのよ。
あたしはこれで充分。
最近道に落ちてるんだよ、マスク」
ママは頭を振った。
えぇ!煙草の吸殻や空き缶みたいに?
うん、とママは頷いた。
「布ならもっと大事にするんじゃないかな。
さすがに落としたら拾う気がする。
使い捨てって捨てていいような気になっちゃうんだよ」
ママは、
あーあー、早く終わらないかなぁ、
でもまだ長引くなぁ、と
目を閉じた。