貯えてあった定額給付金

「景気づけに行って景気づけられちゃった。
 阿吽の呼吸って気持が良い」
ってママは照れながら帰ってきた。

なんのこっちゃ。

「飲食店は時短営業が決まっちゃったから
 凹んでいるんじゃないかと思って。
 様子を見に行ったんだ」
と言うといつもの如く写真をぼくにみせる。

あ!昼からステーキなんて食べて!
贅沢してる!

ん?
玉子がハートだ。

贅沢じゃないもん、景気づけだもん、とママは口を尖らせる。

「13時半で10食限定の日替わりランチは完売してて。
 じゃぁ、と思って、ランチメニューのステーキ丼にしたんだ。
 作る方だって850円のより1000円の方が
 お!ってなるじゃない。
 そしたら玉子の盛り付けをハートで出してきた。
 運んでくれた奥さんが、こっそり
 『ハート、ハート』って笑いながらさ」
なんか泣けてきちゃった、とママはギュっと目を閉じる。

他にお客さんがいる中で、お店の人同士話し込むことはできない、って
ぼくも薄々知ってる。

そのお店の人も、言葉を交わさなくても
ママが何しに来たのかはわかった。
それにガッツポーズの意味で応えた。
それがハートだった。

『第2回非常事態宣言を向い打て』

スローガンのようなその言葉は
声にしなくても伝わっていた。

この前は玉手箱を買ってきて
その前は柚子のビールを飲んできた。

あっちこっちに顔出して、みんなの顔を見て来ている。

でもそれはお金の掛かるこのなんじゃないの?
ママがお金持ちとは思えない。

「一律で配られた定額給付金。
 半分取っといたんだ。
 今が使う時だと思ってる」
うん、とママは頷く。

花を買って、仕事机を買って、まだ残ってたのか。
パパは釣りに行って、パチンコに行って、2ヶ月でなくなってた。
使い方は人それぞれだから、とママは言うけど。

ふむ。

「あたしがそこで1度ご飯を食べたって
 焼け石に水をかけてるだけなんだけど
 沈んだ気持ちに火が付くかもしれないじゃない。
 応援だから。
 その火を燃やすのは本人にしかできないけど。
 相手が燃えればこっちも火が付く、を体感した日でした」

よし!あたしも頑張るぞ!
と言うと、ママは鬨の声を上げた。


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