見本その2 ママ

えいえい
やあやあ

ママが床に座って足を広げ
手を伸ばしている。

ふうふう
いたたた

こうかな?
ぼくも真似して床に座り
足を広げて手を伸ばす。

「うー
 なーちゃん、自分が柔らかいからって
 バカにしてるでしょ」

ひいひい

ママが顔を上げてぼくを睨む。

いえいえ。
ママの真似をしてみようかと。

あたしの真似なんかする必要ないでしょー
ってママはごろりと横になった。

ねぇ、ママ。
ママはいつも何してるの。

ぼくは柔軟の姿勢のまま、尋ねる。

「へ?
 色んなことしてるわよ。
 洗濯して
 夕飯の仕込みして
 ゴミ捨てて
 庭に水蒔いて
 雑草抜いて
 落ち葉集めて
 仕事行って
 洗濯して 
 掃除して
 お客さんのコリほぐして
 花壇に水蒔いて
 調べものして
 銀行行って
 日報付けて
 会計して
 帰ってきて
 夕飯作って
 って、あんた知ってるでしょ?」

そうでした。
止まってるママを見ることの方が少ない。

ママは仰向けに寝転んで
逆さまの顔してぼくを見る。

「またあれ?
 何か探し?
 あたしが今言ったのは、何か、ではなく
 雑務と言います。
 あ、でもお客さんのコリほぐすのは
 やりたいこと、かな。
 うーん、でも掃除も洗濯もしたいし
 夕飯も作りたいし
 まぁ、全部がやりたいことなんだけど
 何かやろう、の何か、ではないよね」

そうなの?
ぼくは、ママは何か、を色々してるんだと思ってた。

「だから、何かを色々、ってなによ。
 抽象的すぎてよくわかんない。
 毎日、やれることを少しづづ続けて行って
 何日か過ぎたころ、やっとこれやった、って思えるもんでしょ?
 なーちゃんだってあたしたちと暮らし始めてから9年経って
 ずいぶん色々何か、してきたと思うけど。
 わざわざ言ってあげないわ。
 自分で思い出しなさい」

ママは、くるっと立ち上がって
ぼくを上から見下ろす。

自分で、思い出す?

そしてぼくは
ぼくが拾われた時の話を思い出し始めた。


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