結局パパはママに、ごめんね、とは言わなかったんだけど
ママはパパに気兼ねなく色々頼むことにしたみたい。
先に家に帰ってきた人が、お米を研いで焚いておく
ってことになって、
夕飯を作った人は、洗い物をしないでいい
ってことになって、
ママも仕事から帰って、座っている時間が増えた。
「できるんなら自分から進んでやって欲しかったけど。
頼めばやってくれるなら、いいか。
嫌な顔しないし。
お休みもずれちゃってるから
あたしも友達と遊ぼ~♪」
ってママも留飲を下げた。
洗濯物をパパの籠とママの籠と分けて
ママの分はちゃっちゃと洗濯をして
パパの分はご自分でどうぞ、
という形を取ってみたけど
パパはまったく自分の分に手を出さず
でもママにやってとも言わず
結局見かねてママが洗って
「あー!靴下の替えがある~!」
ってパパが喜ぶのを横目で見ながら
ママは、けっ、って言ったりしてて
まぁ、やっぱり二人は仲良くやっているな、とぼくは思う。
休みの日はパパが夕飯を作ることになったし。
ママが作ったご飯をパパは
わーい
美味しい
100点!
とか言って
ママは
あたしが作ったご飯が美味しいわけないでしょ??
パパちん、板前なのに、舌、大丈夫??
って本気で言ってて
ありがとう、とか、ごめんなさい、とか
言葉にするだけじゃなくて
パパってわかりずらいけど、いいよね、ってぼくは思う。
「そうだった。知ってた知ってた。
忘れてたのは、あたしだった」
ふふ。
ママ、それを、惚れた弱み、って言うんだよね。
って伝えると
外人さんのように肩をすくめて両手を挙げた。