遅くになってママが帰ってきた。
パパはもう寝てたけど、
自転車が止まる音を聞いてぼくはママのお出迎えに玄関に行った。
ずいぶん遅いね、と文句を言って。
「ほんと、会議ってなんで夜やるのかしらね」
はぁ、とママは冷蔵庫からビールを取り出している。
付き合ってよ、とぼくのチュールもお皿に盛っている。
なんの会議だったの?
婦人部はこの前終わったし、班長会議はまだ先だった気がする。
「商店街の花壇の件。花壇と言うか表の通りのプランターを
譲り受けた場合、どこで一時保管ができて
どこに配置して
維持管理の予算と方法とか。
それに加えて道路の工事も始まるから
一旦現行のプランターを避難させなきゃいけないんだけど
もらうプランターも来ちゃうからさ」
ママは、はぁ、とため息をつく。
なにそれ。面倒な話。
「そうなのよ。
今看板立てて使ってるプランターもあるから
それを今後どうしようか、とか
道路に物を置くと警察の指導が入るからうまい方法は、とか
お店の人たちに仕事を優先しつつも関わってもらうには、とか」
ぐび、とビールを飲みこんでいる。
いつもはゴクゴクと喉を鳴らすのに。
「まぁ、ひとつづつ、丁寧に、だな」
と言うとママはビールを飲み干して、
なーちゃん、寝よう、とぼくを誘った。
そして朝、難しい顔をして出て行った。
ぼくの予想ではね、また泥だらけになって帰ってくるよ。
場所が無きゃ空けるまでだ、って人だからね。
もうママの花壇の季節はスタートした。
春が来る前に、春の準備をするって大変だね。