自然治癒力とは

隠していたわけじゃないんだけど
ずっと言えないことがあったんだ。

それはジャックに関する事なんだけど
本当に衝撃的で
ママでさえ固まって
パパでさえ狼狽した。

いやいや、死んだんじゃないよ。
その手前。

大怪我をして現れたんだ。

気絶するかも、と思う人は見ない方が良い。
それくらい、ひどい傷だった。

ママですら、手を震わせながらお皿をだした。
最初気が付かなかったんだよ。
いつも通りご飯をよそって窓に近づいた。
ジャックもいつも通り、座って待ってたからね。

4月13日の朝のことだった。

パパは救急箱をひっくり返し
粉の、黄色い、止血薬があったはずだ、消毒液も
と叫んで
ママは、いや待って、待って
とパパを止めた。

「人に使う量を猫に使えるかわかなない。
 薬が毒になる時もある。
 うまいこと血管は切断されていないし
 水が上がってきてる。
 黄色い膿もでてない。
 消毒が必要な状態ではないと思う」

冷静な観察かもしれないけど
ママも震えていたし、ぼくもパパも震えていた。

ジャックだけが何事もなかったかのように
ご飯を食べている。

痛すぎて、痛みが麻痺しているのかもしれない。

食べ終わると、ぷぃっとどこかに消えてしまった。

4月15日

「ちょっと、肉が、上がってきたような、気がする」
ママはつぶやいた。
パパは、やっぱり消毒をとマキロンを持ってきた。
待って、待って、とママが止める。

「勝手にやるくらいなら、獣医さんに連れて行こう。
 あたしたちには何の知識もない。
 でも捕まえるときに暴れて
 傷が開くかもしれない。
 怪我を負っているのは事実だけど
 このまま、いけるかもしれない」

ごくりと唾をのむ。
パパも、ぼくも。

4月17日

ちょっと、傷口が小さくなってきた気がする、とママはつぶやいた。
ぼくもパパも凝視できないから、よくわからない。

「食欲はあるから、このままいこう。
 チュルチュルは乳酸菌入りので。
 腸内に免疫細胞がいる。
 そいつら次第で治りが変わるはずだ」
とママは言うと、くちゃくちゃご飯も温めて出すことにしよう、とうなずいていた。

4月19日
寒い朝だった。
一日おきに来るジャックは、どこかで痛みに耐えて丸まっているのかもしれない。
ご飯だけ食べに、一日おきにやって来る。

縫ってもないのに、ビックリするほど傷はふさがってきた。

4月21日

もうちょっとだ、もうちょっとだぞ、ジャック。

4月22日

また少しえぐれた気がする。
痒くて足で掻いたのかもしれない。

4月24日

ここから見ると、もうふさがったように見える。

いや、まだだ。

4月30日

「まったく、営業自粛中で良かったわよ」
ママはため息をついた。
峠は越したみたいだ。

5月2日

5月3日

「なんたる回復力。
 なんたる免疫力。
 3週間でここまで来るとは。
 これでジャックはHIVでないこともわかった。
 自然治癒力とは人知を超えている」

ママは、ひー、と息を吐きだした。

5月4日

5月6日

せっかくできた瘡蓋を剥がすんじゃない!
とママは叫んだ。


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