もう、なーちゃん聞いてよ、と
ママが近づいてくる。
まったく毎日パパもママもよくぼくに聞いてほしいことがあるもんだ。
はいはい、なに?とぼくは目を開けた。
「膝の調子が悪い、手術かしら、って言われたんだけど
膝周りはもちろんむくんでいたんだけど
太もも全体もむくんでて
これは股関節だと思うのよ。
でも本人の自覚的には膝なんだよね」
と珍しくママは仕事の話を始めた。
緑アップは落ち着いたの?と聞くと
鼻血が出そうなほど落ち着いてない、と返ってきた。
「そっちは今、予算案を練ってるところ。
緑アップ期間は予算があっても、事業終了後は
河岸通り会の会費で花の植え替えをやっていかなきゃいけないから
あんまり植えるところ増やせない、ってことがわかって
また1から見直し中ですぅ」
ママは鼻を抑えている。
ほんとに鼻血が出そうなのかもしれない。
話を戻すけど、その場合膝を看るの?
「両方だよ。
ちょっとまずいなぁと思ってるの。
9月は娘さんが帰国してたから、頑張って動いてたみたいなんだよね。
出国を見送って、ドッと疲れも出て
負担をかけちゃったところに無理が出てきた。
1か月でこんなに変わるか、と思うほどなんだ。
さぁあたしはここからどこまでできるのか」
うーん、とママは唸っている。
緑アップもお店も同時進行で、家事まで手が回らない、と言いながらも
やらないわけにいかないし、とブツブツ大声で言って
パパがゴミ出しと夕飯づくりをやるようになった。
どんどん言っていけば、周りの人も手伝ってくれるかもよ、とぼくはアドバイスする。
「ほんと。今日はね、河岸の友人が草むしりやっといてくれたの。
助かった~
土用までにできる限り進めたかったんだよね。
手が足りない、と思っていたら自主的にやってくれて。
緑アップの議事録を有志メンバーに送ってみたんだよね。
進んでいますよ、って報告のつもりで。
でもみんな、あ、三輪さん大変だ、って思ってくれたみたい。
これを仲間というんだね」
パパもみんなも、ありがたいありがたい、とママは手を合わせている。
ぼくも何か手伝う?と言ってみたら
おトイレでおしっこしてくれると助かる、と睨まれた。