「2つ済んで、あと2つ」
ママがまたブツブツ言っている。
終ったことが2つあって、終わってないことがまだ2つあるってこと。
ぼくだって、聞かなくてももうわかるよ。
でもなんだろな。
花壇はまだ続いているし、それはカウントしないはず。
「その花壇の事よ。
土木事務所に道路占用許可を申請するのだ。
正々堂々とやってやる。
あとは持続化補助金申請。これがまた大変。
でも130万円くらいの仕事と思えば、大変な内に入らないかも」
何それ。
ママの仕事はひとつ6500円でしょ?
「そうなんだけど。
そういうつもりで生きて来たんだけど。
ここに来てまさかこんなにお金をグルグルするとは思わなかったわ。
行ってこい、なのか、来ていけ、なのか」
相変わらずよくわからない。
「だよね。渦中ってそういうものなのかも。
終わってから、何をやってたかわかるものなんだよ。
最中って話が決定じゃないから、グルグル変わって行くし
何やってます、ってハッキリ言えないのよね。
構想とは蜃気楼だな」
はぁ、とママは冊子を取り出した。
なにこれ。
ぼくこればっかり言ってる気がする。
「判を作ってエコバックを作ろうかと。
最近スーパーでちょこっと買い物して、袋無くて困ったことがあったんだ。
コンビニもビニール袋有料になるし。
有効に使われるんじゃないかと思って。
それと一緒に冊子も無料配布しようと思ってるの。
というか、ようやくそこに落ち着いたというか。
散々グルグルしたけど、欲望を脇に追いやるのが大変でした。
広告を真面目に考えているのだよ。
お店を持って13年目にして初めてのノベルティ作成なんだから。
なんか、コロナのお陰で経営者っぽくなってる。
銀行に融資の相談とかしたりしちゃって」
怪我の功名になるように頑張らなくては、とママはPCに向き直った。
なんだか最近難しい事言い出してると思ってたけど、
経営者っぽくなったのか。
もうずっと経営者なのに、今更だね、と言うと
ほんとだよ、まったく、とママもうなずいた。