お正月早々パパは仕事で4時半に家を出て行った。
日ノ出より前に職場に着くんだって。
「この時期になると運転してても眩しくないからいいんだよね」
なんて笑ってたけど、パパの不思議な所だな、って思う。
怠け者なのか働き者なのか、わかんない。
それがパパちんの良いところだから
と起きてきたママは
早々にテレビの前を陣取った。
これを観ずして1年は始まらない、とか言って。
箱根駅伝だ。
ちゃっかりビールも用意してる。
おつまみは、ママが自分用にって煮てた黒豆。
お節料理の説明が何かのテレビ番組でやってて
「豆を食べてマメに動く」みたいなこと言ってて
ママは、ハッとしてた。
くそう、正月から黒豆を山ほど食べるから
マメに動いちゃうのか、って悔しがってた。
なんこっちゃ。
ぼくも付き合って視聴準備。
5時間にも及ぶ戦いは毎年同じようで違う。
去年と同じ選手もいるけれど
1年分の変化がある。
にしても、ヴィンセントの走りは圧巻だった。
ぼくにだってわかるよ。
ごぼう抜き。
巨大な魚が小魚を丸呑みした感じで
ただただ抜き去って行った。
「いやぁ、こんなに首位が変わるのも珍しい。
明日はどうなるんだろう」
ね、と泣きながらママはぼくを見たけど
明日の事は誰にもわからないよ、
だからまた一緒に観よう、
ね、と返してみた。