節分だ!と言って
豆を片手に玄関でパパを待ち伏せしてたママは
そっと開けられた玄関のドアに
豆を投げつけた。
ドアの隅間にはパパの姿はない。
あれ?っと言うと
ドアの陰からそっとパパが顔を覗かせた。
「なんでわかったの?
静かに帰ってきたのに~」
とドアの陰から文句を言っている。
「位置情報を確認したからだ!
帰りまーす、って連絡がないから
おかしいと思ったら、もう目の前だった。
あぶないあぶない」
ママは、えい、えい、とパパに豆を投げる。
それが終わると、こっちこっち、と
パパをキッチンに招いた。
恵方巻の材料が並んでいる。
「私のために、作ってください」
ママはニコニコと言った。
パパは、よーし!とやる気を見せて
手を洗っている。
さっき豆をまかれたのに
パパはもうすっかり忘れているようだった。
「じゃん!」
あっと言う間だった。
ぼくとママは拍手をする。
パパは恵方巻が好きではないので
ママ一人分らしい。
「なーちゃんにも」
と言って、一本避けて置いたまぐろを
ぼくにくれた。
美味しかったなぁ。
ぼくは自分の手を、くんくんと嗅いだ。
まだまぐろの匂いがする。
楽しいね、節分って。
明日からは春だ。