ママが編み物を始めた。
断捨離でほとんど道具は無くなったんだけど
唯一残したのがかぎ針セットだった。
お客さんがくれたんだったか
ばぁちゃんがくれたんだったか
もうわからないと言う。
それでも誰かの名残だからって
捨てずにいた。
百円ショップで糸を買ってきて
コースターを作ってる。
と思ったら太い糸でまた何か編んでる。
「うーん、ちっちゃいか」
ってぼくを物差し代わりにしてる。
「太い糸はすぐになくなるなぁ。
あと二玉はいるな」
なんてブツブツ言って、丸めてぼくの顔の横に置いた。
枕かな。
秋は夕暮れ、のように
秋は編み物、ってブツブツ言ってママはどこかに消えた。