「帰ってくるまでにすごいいっぱい人に会うようになったなと
つくづく思うわね」
ママが腕を組んでうなずいている。
今日は唸っているんじゃなくて
納得しているみたいだ。
ようやく何か落ち着いたんだろうな。
バタバタしてたママが止まってるからね。
で、何を納得しているの?と
いつも通り聞いてあげる。
「帰り道で知り合いに何人も会うのよ。
まるで地元の様だ。
ちょっと喋って進んで、またちょっと喋って進んで
ってやっててなかなか帰れないんだけど
面白いよね。
こんなにこの街に知り合いがいたか、って。
そうだもうここに14年居るのか、って。
感慨深い」
うむうむ、とまた頷いている。
住めば都と言うけれど
いつもそうなっちゃうんだよな、
根っこが生えちゃうと言うか
とママはブツブツ言っている。
くすっと笑っちゃったよ。
ママは誰でもかんでも話しかけるからだよ、
とは言わなかったけど。
しまちゃんもトラちゃんもミミちゃんもジャックも。
ママは見かけると、よう!って声かけてた。
死にそうだった子猫のぼくにもだったけど。