「これこれ。何をしているの」
だって。キッチンになんか居て、怖い。
「あんた、魚を怖がってどうするのよ」
ママはぼくをテレビから引きはがす。
やーん。
だって、なにこの、赤い子たち。
「ほら、パパもお仕事決まったから
もう遊びに行けなくなるでしょ?
せっかく桜まつりだったし」
ママの予感はやっぱり当たって
パパは2次面接も通って
ゴルフ場のレストランで働くことになった。
パパの予感もやっぱり当たって
社員割引きでゴルフができるらしい。
失業保険が給付されている間に仕事が決まったので
お祝い金ももらえるらしい。
パパはせっせと手続きに行って、
さらにその足で、二人で桜祭りに行って
なんか、変なのを連れて帰ってきた。
「きんぎょ」
ってママは指さす。
「だって、パパ、金魚すくいしたことない、って言うんだもん。
やってみたら上手でさ。
なーちゃんに食べられちゃうかもよ、って
言ってたんだけど、その心配はなさそうね」
ママは、ふふふ、と意地悪く笑った。
食べないよ!そんな赤いの!
ぼくは鼻息を強く吐いた。
彼らはスイスイと水槽の中を行き来する。
ぼくとも、パパとママともちがって
でも、彼らは家族になったんでしょ?
ってママを見上げた。