概ねオッケー

「一山超えた感じってところまで来ました」

ほえー、とママがひっくり返っている。

そして容赦なくぼくはその上に乗っている。
はいはい、どうしたの、と聞いてもあげる。

「土木事務所に行って設計図を見せて、前回の回答も貰って来たの。
 こっちがやろうと思っていることが伝わって
 維持管理のすみ分けもして。
 概ねオッケーだったのよ。
 それも好意的で。
 思ってる事が伝わる事のうれしさ、って言うのかな。
 なんか、幸せな時間だったなぁ。
 お店に居るときと同じ感じがした。
 あれこれ考えて、お互いにとって最善とはなんだろうか、って
 向き合った感じなのよ」

伝える難しさと伝わる喜びって、なかなか痺れる、と
ママはコタツに潜って行く。

ぷ。なにそれ。
絵も描いて、写真も撮って、図にして、言葉にして、
それでも伝わなない事なんてあるの?

「あるでしょうよ。
 どっちかに否定的な感情があると伝わらないんだよ。
 壁になっちゃって。
 できる限り相手の立場や気持ちを想像して
 文句を言うんじゃなくて
 そうかもしれないけどこういうのはどうでしょうか、って
 譲歩したりルールと照らし合わせたり
 ゴリ押しは良くないけど
 なぜ自分はこう思うのかって経緯も伝える。
 その補足として絵とか図とかがあるだけで
 その前に想いがないとダメなんだよね。
 相手だって個人的な意見と公的な意見をちゃんと分けて答えてくれるんだ。
 公務についてる人って大人だなと思うよ」

こちらも市民として言う事は言わないといけないんだけど、と写真をぼくに見せる。

なにこれ。真っ暗。

「街灯に葉っぱが被ってるから剪定して欲しい、って頼んできたの。
 伝えた相手が直接切ってくれるわけじゃなくて
 そこから委託業者に依頼するから
 まちがって伝わらないように場所を示す地図も付けて。
 ついでに橋の上の街灯の電球が切れていますよ、ってそれもくっつけて」

なんでママちゃんがそこまでやるの??
と一緒に聞いていたパパが目を丸くしている。

ぼくだって驚いたよ。
ママは花壇だけやってるのかと思った。

「ついでなだけなんだけど。
 自分のいる街に関心があるのかって
 あたしが土木事務所で働いてたら思うと思うんだ。
 自分たちで防犯について考えています、って示されたら
 協力したくなると思う。
 緑アップは降って湧いた話で
 通りを良くする一貫なだけなんだよね。
 予算があるから使うとかそういう事じゃなくて。
 あたしだっていつ河岸通りからいなくなるかわからないんだし
 永遠にいるなんてないんだし
 でも次の人に引き継げる状態で残して行きたいなと思う。
 街灯が切れてたらどこに頼むのか誰もが知ってていいんだよ。
 それを誰かの義務にするんじゃなくて、自分もやっていいんだなと思って
 やってみた。
 緑アップの青写真もそろそろ固まってきたから
 またグッと引いて見えてきたんだ。
 やっと目の前のカオスから抜けれるところまできました」

ママはムニムニとまたコタツに潜って行った。

ぼくとパパは、よくわかんない、と目を合わせる。

でもわかろうとしてみようかな。
ママの立場や気持ちを想像してみようかな、って思った。
情熱って伝染するのかもね。


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