格闘

年末、らしい。
パパはお節料理作りの手伝いに先輩のお店に行くことになり
徹夜になる、らしい。

そんなとき、ばぁちゃんが
「ごめん、起き上がれない」
って言った。
「ごめん、もう、だめだ」
って言った。
ばぁちゃんは、必死で
トイレまで自分で行く
って頑張ってた。
それが1日の大仕事のように。

ママは
よし、わかった。
と言って
大人用おむつを薬局に買いに行った。

「あんたは早々に猫砂使ってくれたからね。
 かぐや姫みたいに、するするーって
 大人になっちゃったし。
 あたしもやり方よくわからないんだけど
 ここは頑張らねば」

とは言え、赤ちゃんにやるおむつ替えと
大人にやるおむつ替えは想像をこえていた、らしい。
ママがばぁちゃんの両足を
片手で持ち上げて、お尻を浮かせるって
ちょっと無理だと思う。

ぼくは、ハラハラしながら
和室とリビングを行ったり来たりする。

その内、ばぁちゃんは
「もう、病院入っていいよ。
 もう。いいよ。
 これまでだ」
って言いだした。
「肺がんは、寝たきりにならないで死ぬのかと思ってたの」
ばぁちゃんは悔しそうに
目をぎゅっとつむった。

しん、とした部屋で
音も無くママは
幽霊のように立ち上がる。

次第に仁王立ちになった。

なんだ?
部屋にビリビリ、って電流が走った気がした。

「今がいつだと思ってるんだっ!
 年末年始に入院できる病院がどこにある!?
 おむつが代えられません、って入院する奴があるかっ!!
 今更、ぶれるなっ!
 ここで死ぬんだろ!!!」

ママの怒鳴り声だった。

ばぁちゃんは、何度もうなずいて
何度も、ごめん、って繰り返した。

自分の子供のおむつ替えより先に
ばぁちゃんのをさせることになって
ごめん
って。
涙が流れている。

ぼくは、
ママって、うる星やつらのラムちゃんだったのかな
とか
頑張ればぁちゃん、やり遂げろ
とか
頑張れママ、やり遂げろ
とか
色んなことを思いながら
オロオロして
山積みのおむつの上に、座った。

応援って。
ばぁちゃんは、応援してね、って言った。
ママは、応援するぜ!って胸を叩いた。
ぼくも、応援する、って言った。

応援って。
大変なことだった。
一緒に喜んだり、怒ったり。

ぼくは、ちょっと居たたまれなくなって
おむつを踏み踏みする。

ここを乗り越えれば
まだやれるだろ
って、ママはこの日何度も
ばぁちゃんのおむつを替えた。
ふたりで、
あーしてみよう、こーしてみよう
と作戦を練り始める。

翌朝、おせち料理をお土産に抱えたパパが帰ってくると
ママとパパは玄関で話をして
パパは目を丸くして
ママ、寝れたの?って心配して
ばぁちゃん、病院に、って言いだして
いや、まだばぁちゃんやれる、
あたしたちが諦めてどうする、
ってママが止めて
で、
パパは
「お義母さーん、おせち食べます~?」
ってばぁちゃんの居る和室にお重を持って入った。

もじもじしながら
ごめんなさい、そんなつもりはなかったんだけど
寝たきりになってしまって
肺がんってもっと早く死ねるのかと思ってて
と、言い出したばぁちゃんの話をさえぎって
「この、子持ち昆布、お義母さん好きじゃないかな~と思って」
ってお箸でつまんでばぁちゃんに見せた。

ばぁちゃんは
目にいっぱい涙をためて
「食べます~」
って笑顔で言った。

で、
ぼくにはナルト?


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