朝起きると、ママがトラさんと話をしていた。
ぼくはいつものトラさんかな、と思って
嬉しくなって、近づいた。
「トラちゃん。お鼻、痒くない?」
うぅーん。
別に、痒くないのう。
「トラちゃん。おてて、痛くない?」
トラさんの左手は、血がにじんでいた。
別に、痛くないのう。
トラさんはぼくに気が付くと、
あぁ、先日の。
と声をかけてくる。
先日の、じゃないんだけど、
もっと前から知り合いなんだけど、
と言いたいことろをこらえて
こんにちは、と返事をした。
「トラちゃん。お耳、痒くない?」
トラさんの耳は湿疹がひどい。
別に、痒くないのう。
トラさんはとぼけているわけでもなく
そう答える。
「本人がそういうなら、それが本当だものね。
トラちゃん、クチャクチャご飯、食べる?」
トラさんはニッコリほほ笑んで、
食べる~
と言った。