「桜が散って来ると
チューリップの出番なのよね」
ママは相変わらず、にししと笑っている。
独り言をこっそり聞いているぼく。
「去年の10月は死にそうだったけど
半年たって咲いてくれてるのを見ると
頑張った甲斐があったと許せるもんだね」
許せるの?
ぼくはつい、ママの独り言に参加してしまった。
あら、なーちゃん、いたの?
とママはぼくに目を止める。
「許せると言うか
やって良かったな、って思うと言うか。
でもさ、1丁目と5丁目に差が出ちゃった。
5丁目は植え替え前の天地替えが間に合わなくて
カチカチ地面のため、球根でも歯が立たなかった」
反省反省、とママは肩を落とす。
1丁目はどんな感じなの?
ぼくはママにスマホで見せろと催促する。
えへへ、と照れながらママは見せてくれた。