最近何だかママが家に居る。
丸々1日ではないけど、早く帰って来たり。
「そりゃそうよ。コロナだもの、コロナコロナ」
うふ、と言ってウインクをしている。
なんだか楽しそうだね。
ぼくはママの腿の上に移動する。
「非常事態、嫌いじゃないし。
こんな時でもなきゃお店閉めれないし。
いや、自分でやってるんだから閉めれるけど
公に休めるならそれはそれで。
こそこそ仕事するのが好きなのよ。
こっそり出張に行ったりさ」
ママはえへへ、こういうの得意、って笑った。
なにそれ。こそこそ仕事するって。
「今日だって出張行ってたんだから。
この人から移ったらそれはもう仕方がないな、って
お互い思える人の所に行ってくるって
なんか良いのよね。
お互い最大限気を付けて、それで会う。
信頼ってこういうことを言うんだな。
絆って毎日会うとかそういう事じゃないし。
信じて頼る。
精神的にもすごく良いと思うんだ。
行く側だってドアtoドアで手袋して、徒歩で
人のいない道通って、玄関でアルコール消毒して
白衣に着替えて、マスクしたままで。
迎える側だって、喚起して
マスクして、私が帰った後、手洗いうがいして換気して。
すごくない?」
ママはぼくにスマホを見せる。
人がいない道だ。
こんな急な坂道、下って行くの?
「そうよ。面白いでしょ」
ママはニヤニヤしている。
まったく、なんでこういう状況が好きなのか
わかったよ。