抗っても抗っても

「あと1ヶ月、踏ん張れるかな」
ふぅ、とママがため息をついている。

なんだろね。こういう時はあれだな。
仕事の話だ。

「だいぶいいとこまで身体の調子が戻ったのに
 また巻き込まれてる人がいるんだ。
 心優しい人ほど身体を壊すっていうのは
 やるせない」
ふぅ、とまたため息をついた。

よくよく聞いてみると、ママのお店に通い始めて
5年くらいになる男子がいて
腰が悪くて
散々病院にも行ったけど改善せず
ママの所で足の指のテーピングから始めた人だった。
ぼくもこれまで聞いたことがあったけど
ずいぶん良くなったはずの人だ。

「もう自分の人生を生きて良いと思うんだよね。
 先輩の心配をして、後輩の心配をして
 会社の心配をして。
 あちこちフォローして気遣って歩いてるうちに
 にっちもさっちも行かなくなっちゃった。
 また会社で倒れるところまで行かなきゃ止まらない。
 そんな止まり方、20代ならまだ復活できるけど
 今やったら死活問題だよ、という話をしたのだが」
うーん、とママは唸りだした。

それでも、止まらない物もアル、って。

「なんとかあと1ヶ月伴走しないと。
 そこが本人の納得ポイントなんだ。
 そこまでやり切れたら転職も考えます、って。
 本人のせいじゃないんだよね、転職するのも。
 会社って組織だから。
 1人抜けても回って行かなきゃいけない。
 その抜け方は、討ち死にじゃないほうがいい」
うん、とママは頷いた。

治して戦場に送って、また壊して
また治して戦場に送って、また壊して。
やりきれないよ、とママは言った。


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