「ちょっと、なーちゃん」
はい?
「あんた、シンクに上ってるでしょ」
ん?
上がったような、上がってないような。
「昨日の夜、ずいぶんうるさいな、と思ったら。
またきんぎょずとやりあってたでしょ」
なんで?なんでなんで?
「シンクの上に、あんたの足跡と
水槽から飛び出た水で、びちゃびちゃなんですけど」
あらら。
ぼくは首根っこをつかまれて、シンクの上に乗せられる。
「ほら!足形びったり」
ママはぼくの足をつかんで足跡に乗せる。
・・・だって。
きんじょずが、チョッカイ出して来るんだもん。
「うそうそ。逆でしょ?」
うそじゃないよ。
だって。昨日の晩。
ぼくは真っ暗になったリビングを見回りしてた。
パパとママはいつもの通り早く寝てしまったし
夜はぼくがしっかりしなきゃ、と思って巡回してる。
うんうん。
カリカリに異常なし。
うんうん。
お水も大丈夫。
トイレにも寄って。
あー
けむくじゃら蔵がまたウロウロしてる~
ひそひそ
パパとママが寝たからって、自分の時間だと思ってる~
ひそひそ
これでもくらえ~
ばしゃ
鯉ちゃんが尾びれで水槽の水を叩く。
さらに大きくなっていた彼の尾びれは、力強く水を動かした。
わぁ!冷たい!
まんまとぼくの頭にその水は直撃し、
ぼくは腹を立てた。
なにするんだよ!
水槽の下から吠える。
ひそひそ
あんなのも避けられないなんて
ひそひそ
けむくじゃら蔵は情けない
ひそひそ
なに!
ぼくはシンクに飛び乗った。
目線は同じ。
じっと見つめあう。
と、言っても相手は三匹だ。
六つの目がぼくを見つめる。
ぼくは、てんてん!と水槽を叩いた。
ばしゃ
彼らも負けてない。
てんてん!
ばしゃ
てんてん!
ばしゃ
・・・と言うわけだよ、ママ。
「で、これ、誰が片付けるの?」
ママ!
この時ばかりは、ぼくときんぎょずは手を組んだ。