「舌を噛みそうだ、と思っていたけど
これすら噛まずに言えるようになっちゃって
まったく何なんだろうか」
と言ってママはいつものように、ぼくに写真を見せる。
変な住所。
「そうなのよ。7/14までは事務局の住所だったのに
7/15から郵便局留めになったんだよね。
応募する人の数が多い、ってことかしら。
商工会議所も地域のと本部のと、って縦の組織になってるみたいで
連携が上手く行かないからか、7/15から地域の商工会議所スルーして直接送っていいです、
って変更になって。
いやいや、地域の商工会議所と話を詰めてる段階だったのに
様式3、いらないの?とかさ。
ライブで進んでる感あるよね~」
と言うとママは自分で肩を揉み始めた。
でも封筒が出来上がったってことは、もう終わりなんでしょ?
ようやくひとつ手が離れる、ってやつでしょ?
うん、とママは頷く。
「第三回の募集に参加してるんだけど、応募要項が日々変わっちゃうんだ。
書きあがって、もう一度見直ししたら、提出用紙のフォーマットを更新しました、
とか出てるの。
いやぁエンドレス。直しても直しても、根本から変わっちゃうんだもん。
さっさと出さないと、閉め切り前にまた更新されちゃうかも。
あとは横浜商工会議所の書類待ちなんだけど
それも任意でいいですよ、に変わっちゃってて。
横浜商工会議所がかわいそうじゃない、頑張って書類作ってるのに」
ふむ。色んな人が関わって、多くの人向けに動いてるから
意見を聴けば聞くほど更新されちゃうのか。
そうね、とママはまた肩を揉んでいる。
「あたしがどれだけ資料を読み込んだか、なーちゃんに見てもらおう」
と言うと、また写真をめくった。
「三部作だよ。100枚近いの。
公募要領とコロナ特別対応型についてと事業再開枠について、だ」
赤い線や丸でグリグリ書き込みしてある。
ここまでやって、更新されちゃったの?
そう、とママは泣きまねをしたかと思ったら笑い出した。
「いい加減慣れたからね。変更点だけ拾って修正しました。
給付じゃなくて補助だから、案外自腹分が多いんだけど
補助が無ければできない事やるからね。
いい勉強になった。
他にも商店街仲間で出そうとしてる人もいるから
様式5はさぁ、とか暗号みたいな話が通じて面白い」
硬い話に見えて、別に硬い話じゃないの、と笑っている。
なんだ。楽しそうじゃん。
大変なことと楽しい事はイコールなんだね。
そうよ!とママはガッツポーズを見せた。