寝てるんじゃ、ないんだね

はぁ~
久しぶりに穏やかな日中。
いやいや、別に嫌だったわけじゃないよ、うん。
まぁ、落ち着かないって言うか
気が抜けないって言うか
ゆっくり眠れないって言うか。
ママなんてもっとだけど。

今日、ママはちーちゃんを連れて仕事に行っている。
日曜にちーちゃんはやってきて
月曜はパパがお休みで
火曜と水曜はママがお休みで
木曜はパパがお休みなんだけど
やっぱり、病院に連れて行こう、って
パパが運転する車にママとちーちゃんは乗り込んで
でもパパは、オレもちーちゃんの写真撮りたいんだけど
スマホのカメラが壊れてて
ソフトバンク行ってくるから、その後で病院行こうね
ってウキウキしてた。

ママは、うーん、ちょっと昨日の晩はあんまりミルクも飲まなかったし
これが成長なのか、何なのかがわからないとな~
とブツブツつぶやいてた。

ん?
パパの車の停まる音がした。

早いな。
なんだか、胸騒ぎがする。

静かに開けられたドアから、ママが陽炎の様に入って来た。
手にはちーちゃんの入った籠を持って。

「死んじゃった。
 死んじゃったの。
 間に合わなかったの」

ママはぼくを見るなり、
わぁぁぁぁぁぁ
と大きな声を上げて泣き出した。

パパはママの後ろでたたずんでいる。

ぼくは鼻をひくひく、っと動かした。
ママが下した籠に、足早に向かう。

小さな手に顎を載せて、ちーちゃんは眠っているように見えた。
でも
眠っているんじゃないんだね。

ぼくの鼻は敏感で、もう
ちーちゃんからは生きている匂いは、しなかった。

口の横がピンク色になっている。

これは、血?

ママは
わぁぁぁぁ
わぁぁぁぁ
って泣きながら
お庭の桜の木の下、掘って!
ちーちゃんはうちの子なんだから!
うちで眠るの!
って叫んだ。

パパは、うんうん、って
何度もうなずいて
庭に出ていく。

ごめん、ごめん、ちーちゃん
あたしが、あたしが何もわからないから
あたしが、猫じゃないから
おっぱいもあげられなくて
何も気が付かなくて
うわぁぁぁぁぁぁ

ママは狂ったように泣き叫んだ。

ぼくは下を向いたまま、頭を上げることもできない。
ママを見ることも、ちーちゃんを見ることもできない。

驚いたとか、悲しいとか、じゃなくて
ぼくもこうなっていたのかもしれない、とか
ママに会う前に、何度もこういうの見た、とか
色んな映像や思いが交錯している。

ママは、そんなつもりじゃなかった、と
ちーちゃんに覆いかぶさるように肩を震わせた。

パパが掘った穴に、静かにちーちゃんは入った。
もう鳴き声も聞こえない。


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