ママがあちこち拭いて歩いている。
今日はエアコンの上だ。
なんでそんなところまで。
意味があるとは思えないけど。
「チラッと目に入るのよ。
いつかやっつけてやる、と思っていたし
そのいつかは今だ」
マジックリンを雑巾にかけて椅子に上って
ママは、ふふふ、と不敵に笑いながら振り向いた。
洗剤臭い。
ぼくは鼻がいいからね。
あんまりあちこち洗剤かけられると、ちょっと嫌。
「あんたがあちこちおしっこかけて臭いよりはましですー」
とママはぼくを睨む。
うーん、それを言われると、ぼくも困る。
臭くしようと思っているわけじゃないんだ。
「あたしだってそうですー。
このマジックリンは二度拭き要らないタイプだから
窓開けてるうちに匂いも無くなるわよ。
と言う訳で、窓開けたいんだけど」
ぼくは窓の前を陣取って日向ぼっこをしている。
こればかりは譲れない。
「もう。文句ばっかり言って!」
と言いながらも、ママはレースのカーテンを引いて
別の窓を開けに行った。