「ようやく全体像が見えたのよね」
と言うとママは庭でガサゴソし始めた。
ジャン、と変な容器をぼくに見せる。
なにそれ。
「スリット入りのプランターだよ。
横向きに苗を植えるとプランター壁面から
花が咲いているようになる」
?
ぼくは緑アップの全体像が見えたのかと思っていたんだけど。
お家のガーデニングの話?
ママはあれこれやっているから何の話をしているかわからない。
トイレのリホームは終わって
持続化補助申請は採択待ちで
植栽帯リストは出来上がって
庭のキュウリは片付いた。
そろそろ来年の春に向けての庭づくりでしょ?
「まぁ、それも兼ねてなんだけど。
緑アップの『地域緑化活動』の予算配分を考えてるの。
『民有地緑化』は概ね工事費用のことで
そこは1割自己負担になるから
できる限り『地域緑化活動』でやらなきゃいけなくて。
900万円の工事をしたら90万円の自己負担なんだよ。
みんなから集金しなくちゃいけなくなっちゃう。
河岸は会員数が少ないから、1万円ずつ集金したって足りないし。
どこかでなんとかして、それ、作んなきゃいけないし。
だからできる限り100%補助の『地域緑化活動』に入れたいんだよね。
つまり、みんなでやる事には予算を出しましょう、という横浜市の方針。
さてみんなでどこまでできるかを実験するのが私、と。」
ママはビニール袋からパンジーを取り出している。
複雑すぎてぼくにはよくわからないよ、と言うと
あたしだってわからなかったわよ
質問事項をまとめて、回答もらって、質問して
という2時間を過ごして
概要がつかめたところだ
とママは胸を張った。
さぁやるわよ、とポットから苗を外している。
おぉ。
フェンスに吊り下げるんだね。
ぼくはウキウキとウッドデッキの最前線で出来上がったプランターをまじまじと見た。
空中に浮いていて夏に見たキュウリみたい。
そう言えばキュウリがいたのと同じ場所だ。
「ハンギングバスケットって言うんだって。
なかなかコツがいる、という事がわかった。
やっぱり講習会をしないと上手く行かないかも。
乾燥しやすい、ということで初めて水草を使ってみました。
これでどれくらい防御できるか
次の春まで実験は続く」
はい、いっちょ上がり、と言うとママは
チョーリップを植えに行ってしまった。