子育て論

「今日来たお客さんの旦那さんが
 突然子犬を買ってきちゃったんだって」

ママが可笑しそうに顔をクシャっとする。

そのご夫婦は七十代で、
旦那さんの面倒を見るだけで手いっぱいだと言うのに!と
かなりご立腹だったらしい。
奥さんは旦那さんに認知症が始まっている、と睨んでいる。
犬の世話など見れるはずないと、肩を落としていたそうだ。

「でね、なーちゃんが我が家に来た時の話をしたら
 笑顔になったわけよ」

へ? ぼくの話?

そうそう、と言うとママは笑い出した。

「なーちゃんなんて、死にそうです、って感じで
 道に落ちてて、輸血は受けるわ、
 猫の生活用品は用意しなきゃいけないわ、
 お店はオープンして半年だわ、
 ペット不可の部屋から引っ越しだわで
 結構パニックだったのよ、あたし」

へ? そうだったの?

「そうよ。夜も息してるかな、って
 寝てるとこ耳あてて呼吸聞いたり。
 あぁ、国民健康保険にも入っていないこの子の
 医療費を私は作れるだろうか、とかさ。
 でも、どってことなかった。
 なーちゃんは健康に育って
 最初以外病院に行ったことないもんね。
 そのお母さんに、大丈夫ですよ
 心配するより産むがやすしですよ
 とか言っちゃって。
 動物病院はどこがいい、とか
 近くに犬の幼稚園もありますよ、とか
 ママ友みたい」

あはは、と笑っている。

ふうん。
ぼくの成長記録がママの経験値になっているのか。
それだけ一緒にやってくれた、ってことかな。
ぼくは一人で大きくなった気でいたけど
思い返せばそんなことなかった。
いつでもパパとママはそこにいた。

「でね、そのワン子が来てから娘も息子も
 よく帰ってくるみたいで。
 老親だけでは大変だろう、って。
 そうやって人が集まるんだよね。
 起爆剤みたい。
 散歩に連れ行くようになったら
 イヌ友も増えるし。
 良かったね、って思う。
 そのお客さんはさ、
 この家に来て、この犬は幸せなんだろうか
 他の人に買われた方が良かったんじゃないか
 って思ってて。
 もうその時点で、充分幸せなんだよ、その子は。
 大変なこともあるけど楽しいこともいっぱいあるよ
 なんて言ちゃって、あたしも経験者だなぁなんて思った。
 これも、なーちゃんが落ちてたお陰だな」

そう?
ぼく、ここに来てよかった?
一応聞いてみる。

「良かった!」
と言ってママはぼくを抱きしめた。
「なーちゃんはここに来てよかった?」
と聞くので
もちろん!
と返した。


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