夏が来た
と思ったら
ばぁちゃんが来た。
「何もできませんが、お世話になります」
とばぁちゃんは頭を下げた。
ぼくは、いえいえ、としっぽを振った。
パパは、いえいえ、と腕を振るった。
パパは板前さんで、ご飯を作るのがうまいらしい。
時々釣ってきた魚をさばいて、ぼくにくれる。
ぜんぜん食欲がでなくて
と言っていたばぁちゃんは
パパが作ったご飯に満遍なく手を伸ばし
結局完食した。
そして、なんだが恥ずかしそうにしていた。
食べられない、って言いながら全部食べちゃって、ごめんなさい
って真っ赤な顔をしている。
食べられるうちは、食べれば?
そのうちホントに食べられなくなっちゃうんだから
とママは笑っている。
パパも、今度は釣ってきた魚をさばこう、やっぱり釣りたては美味しいですよ
と笑っている。
ばぁちゃんは病気だと聞いていたけど
なんだか三人とも楽しそうで
ぼくは嬉しかった。