あのね、ママ。
ぼくは廊下からママに声をかける。
「あら、なーちゃん。
中に入れば?」
ママは本から目を上げた。
うん、あのね。
ぼくは、なんて言ったらいいかわからなくて
もじもじする。
あのね。
えーと。
ママは噴出した。
「なんなのよ」
ぼく、パパとママと暮らしてるの、好きだよ。
こんな言葉で良かったのかな、って思ったけど
ぼくの語彙力じゃこれくらいで
あぁ、だからママはいつも本を読んでいるのか、とか
色んな事を思ったけど、ぼくは読めないし
もっとテレビを見なくちゃな、とか思ってた。
ママはキョトンとした顔でぼくを見て
次第に、にやーと口を横に広げ
「知ってる」
と大きな声で言った。