厄除けとは

「うわーん
 9000円も取られた~」
と、パパが泣きながら帰ってきたのは2週間くらい前だったと思う。
ママは、ふむふむと状況を聴き、
「ついに見放されたんだね」と言った。

何に?

ぼくとパパは同じ顔をしたと思う。

「鶴岡八幡宮の神さまに、だよ。
 こんなに汚い車を守ってやらなきゃいけないの?
 祈祷代返すからお役御免です、ってことだな」
とママは言うと、パパは、ハッとした顔をした。

そう言えば、「いい加減に釣りばっかり行ってないで車の掃除をしろ」
とママはパパに言ってたな。
買い物に行っても買い物袋を乗せる場所が無いくらい
後部座席は釣り道具とゴルフ道具でいっぱいだ、って。
道具というよりはゴミで、エサや仕掛けを買った時の袋なんかが
そのままポイって置かれていた。

「まだ違反切符を切られるくらいなら御の字だと思うけどね。
 実際に事故にあったわけでも起こしたわけでもないし。
 執行猶予だよ。
 悔い改めてまたお願いに行きますか?」

ママはパパに攻めよっている。
パパは会社でコロナ休暇というのが出ていて
実質週休3日になってて、釣りの事ばかり考えてたからね。
行くのならお店もお休みして付き合ってやろう、とさらにママは詰め寄った。

ぐうの音もでないとは、このことか。
パパは神さまに弱い。
神さまに見放されたらおしまいだ!と思っている。
それでも何度も繰り返すんだけど。

そして朝早くからパパは車の掃除をして
ママは緑アップの仕事をして
早々に出かけて行った。

どうなの?神さまは許してくれたの?

ママは、ふふふ、と笑っている。

「わからない。
 でも綺麗になった車でお出かけは気持ちが良かったな。
 天気も良かったし。
 実は9月はここに引っ越してきた時期で
 車を買い替えた時期で
 色々私的にはお祝いの時期なんだよね。
 思い出深いというか。
 見直しの時期というか。
 点検の時期というか。
 作戦の時期というか」

そうそう、もう茅の輪も出てた、と言って写真を見せる。

なにこれ。

「6月の終わりと12月の終わりに出るんだけど
 今年はコロナのお陰かもう出てた。
 パパちん初めてだったんだって。
 人形で身体を撫でて、ふっ、ってして収めるの。
 これで肩が痛いのも治るかもね」

パパは8月のゴルフコンペから肩が痛いとうるさくて
でもママは整体をしてあげなかった。

「だって痛いことしないと治らないやつだもん。
 パパちん痛いことして治すの嫌いだし。
 文句言うからやってあげない。
 運動不足のまま思い切りクラブ振ったらああなるわよ。
 自覚して、日々の行動も見直さないと治らないやつだから」

神さまの前に行くと、パパちんちょっと反省するからね、
とママは笑っている。

厄除けって、自分で自分を祓うってこと?

ぼくは神さまが厄を除けさせてくれるのかと思ってた。

「そんなに甘くないわよ、自分で祓えるものは自分でやらないと。
 鶴岡八幡宮の神さまってけっこうスパルタであたし好き」

ね、とパパの背中を叩いていた。


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