匙加減が難しい

「オレはちゃんと言っているんだよ。
 ハローワークに行きたいので、ランチまでで帰らせてください、って」

パパはカエルの鍋つかみをはめて、パクパクと動かした。

「でもさ、人がいないんだよ。
 お願い、出て!人がいないんだ!って言われると
 状況もわかるから、ハローワークは次でいいか、って。
 
 なーちゃん、ママ、怒ってた?」

カエルは、パクパクと口を動かす。

ママは怒ってはいなかったけど
心配してたよ
って伝えると、
だよね
ってパパはうなだれた。

「パパも困ってるの。
 なーちゃん、どうしよう」

カエルがパクパクとぼくに向かってくる。

えぃ!と噛みついてみた。

「うわーん
 なーちゃんも怒ってる~」

パパは天井を仰いだ。

怒ってないよ。
でも、どうするの?

「このままじゃ就職活動もできないし、
 でも次の求人が見つからないと辞められないし、
 もう少し、様子を見るよ。
 お給料をもらっていないわけじゃないからね。
 でもさ、もう一軒お店開いたら、お前、やるか?とか言うんだよ」

え!パパ、お店持つの??

「無理無理無理無理。
 オレ、そういうの無理。
 ママだって、やだー!って叫ぶよ」

パパは、ぶんぶん、と頭を振った。
「そんなことになったら、
 ママとなーちゃんと一緒にいれる時間が無くなっちゃう」

人生、匙加減が難しいね
ってパパはカエルの手のまま、ぼくの頭を撫でた。


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