「なーちゃん、最近上まで登らないね」
ん?
言われてみれば、そうかも。
「オレも最近釣りに行かないんだけど
そうするとママが
使わない釣り竿は捨てます!
って張り切るんだよね。
なーちゃんも、キャットタワー使わないと
ママの捨てる捨てる病がでちゃうよ」
パパはキョロっと瞳を動かす。
怖いよね、
取ってあるの、って言っても
聞いてくれないし。
それとなく使ってるアピール、大事だよ
って教えてくれる。
そう?
じゃちょっと。
登ってみるか。
「あ~
なーちゃん、お腹たるんでる~」
パパは嬉しそうな声を出した。
たるんでないもん。
もともと、こういう形なんだもん。
えいやぁ、と上の段に飛び乗った。
どう?
「そうだよね、二段目まで上がれるんだし
三段目も上がれるよね」
うんうん、とパパはうなずく。
おじいちゃんになって
もう登れなくなっちゃったのかと思ったよ、って。
失礼な。
ぼくはパパと違って身体能力が高いんだからね。
「えー、なーちゃんいつの間にそんな言葉覚えたの?
オレだってそんな単語、そうそう使わない」
ママちゃんだな。
なーちゃんがオレより賢くなったらどうしよう。
それも良いか。
パパは1人でブツブツ言っている。
そんなパパをよそに、ぼくはもう一段上を目指す。
えぃやぁ、と小部屋に入った。
久しぶりに高いところからリビングを見渡す。
ふむ。
紙袋の山もない。
そうだな。
時々ここまで上がって、確認しよう。
だってここが、ぼくの世界だから。