「またまたまたまた」
「ほんとだって。
引っ張った時に、ぷつぷつぷつぷつって
縫い目がほどける感じがしたんだよ」
パパはママの訴えを真に受けない。
「だって動いてるじゃん」
「そうだけど」
ママは昨日のジャックの事を話している。
そりゃぼくも見てたし驚いたけど
さすがに縫いぐるみだったかと言われると
よくわからない。
って言うか、違うと思う。
「だってジャックはお外の子なんだから。
草むらに突進して
なんかの種が付いたんじゃないの?」
珍しくパパの方がまともなことを言っている。
ぼくは可笑しくなった。
テレビには年末に録画しておいたHeroが映し出されている。
ねぇ、見ないの?ってぼくは二人に聞いた。
見る見る
と二人は画面に顔を戻す。
「大丈夫だよ。ジャックは元気だったもん。
糸がほつれても、またどこかで縫ってもらってくるから」
ほら、とパパがスマホを見せる。
そこにはキャットミントを食べるジャックが映っていた。
元気なら、ぬいぐるみでもなんでもいいんだけどね
とママも大人しくなる。
ぼくは、そうなの?とママを見上げた。