「どんなときにもメリットはあるもんだね」
ママがぼくに声をかけているのはわかったけど
ぼくはキャットボックスから出る気はない。
最近のお気に入りなの。
パパに邪魔されないし。
ママは気にせず話し続けた。
「昨日花壇の手入れしにお店に行ってたの。
おかげて商店街の人たちに会えたんだけど
みんなちょっと仕事の仕方変えようって思ってた。
午前中はバイトして午後だけ開けようかな、とか。
家に居たいな、とか。
自粛解除になってもコロナ前とは変わるかも」
そうなの?
元に戻ろうとはしないの?
お店の人は元に戻ろうと懸命になるのかと思ってた。
「みんなもう受け入れてたよ。
今まで通りの営業はできないんだ、って。
消毒置いたり距離を取ったり、っていう変化は
当たり前なんだけど
生き方を考え出した、って感じかな。
かくいう私も週6日営業じゃなくて
週3~4日の営業でいいかも、と思っている」
そうなの?
ママは、うん、と頷いてぼくを見ている。
「確実に収入は減ったけど
支出も減ったんだよね。
こうして家に居るようになって
なーちゃんと一緒に居れる時間も増えて
楽しいし」
ぼくはちょこっと手を出した。
ぼくもだよ、という合図。
「あたしもパパちんも世の中の動きとはズレてるな、って
思っていたけど
逆に世の中が合ってきた気がする。
これで良かったんだな、って改めて思っちゃったよ」
ふむ。
ぼくもパパとママの今まで通りが、
結構良いんじゃないかと思っていた。
なんて言うと、またまた、いまさら、とか言われるから
黙ってるけどね。