ちょいちょい
ちょいちょい
これはママのヘアクリップだという事は知っている。
10年前にパパとママが夢の国に行って
ママはネズミの耳を頭につけて帰ってきた。
ぼくはそれをコタツテーブルから落とす。
「何やってるのさ」
ママはまたテーブルに戻す。
ちょいちょい
ちょいちょい
ママはまた戻す。
「まったく、なんで落とすのさ」
ぎゃははは、とコタツに突っ伏している。
ママ、それ、バカ笑いって言うんでしょ。
ぼくはママをじろりとにらんだ。
何が可笑しいのかわからない。
ママは
ひー
もうだめ
なんでー
とお腹を抱えてまたヘアクリップを戻す。
ちょいちょい
ちょいちょい
ぽとり
ママの爆笑は止まらなかった。
何が可笑しいのかわからない。
ぼくとママは永遠にこの攻防を繰り返した。