「さぁ、準備は良いか」
ママがぼくを覗き込む。
うん。ぼく、やってみるよ。
階段からパパの足音がする。
今日こそ直談判する。
もう、尻尾を掴まないで欲しいということ。
ぼくは戦うぞ、という意思を見せること。
ドアが開いた。
パパが近寄ってくる。
「なーちゃん、居たー」
ニコニコしながらパパはぼくの尻尾を触ろうとする。
パパ、それ、もう止めて欲しい。
ぼくはキリっとパパを見上げる。
え?なんで?
とパパは止まった。
「いいじゃん、オレは触りたい」
パパは手を伸ばす。
止めろ!
ぼくは猛然と立ち向かった。
パパの手を抑える。
両手で捕まえて噛みついた。
「わ!なーちゃんなにするの、止めて」
パパは驚いている。
ぼくも何度も、止めて、って言った。
それでもパパはしたんだよ、こういう風に。
わぁ、痛い痛い、止めて
とパパは騒いでいる。
「はい、終了。
パパちんもやられて
なーちゃんの気持ちがわかりました?
なーちゃんも、やり過ぎはダメ。
相手が本気で怒り出さなきゃ止めないってのは
子供と同じだよ。
二人はこれからも一緒に暮らしていくんでしょ?
お互い気遣いながら、やって行こうよ」
ママは仲裁に入った。
パパは、オレはこんなに強く尻尾にぎらないもん
って不服そうだったけど
今日はもうそれ以上尻尾に触れなかった。
ぼくもちょっと自分の意見を押し通した感じがして
まだドキドキしてるけど
やって良かったな、って思った。