「テスト版が作れたの。見て見て」
と言うとママはぼくを揺り動かした。
布団に潜って寝ているという事は
隠れているという事をわかって欲しいよ。
見ないと引きずり出されちゃうから
早めに返事するか。
もう。なぁに。
「河岸通り会の伝言板を作ろうと思って。
高橋書店の1F、使っていいって許可が出たので」
じゃじゃん、と写真をぼくに見せる。
伝言板?
手書きのコメントが地図の周りに貼られている。
今はみんなネットを見るんじゃないの?
ずいぶんアナログだね。
「両軸で回そうと思うんだ。
ネットはネットの良さがある。
アナログはアナログの良さがある。
みんなで集まれないから、伝言を貼りあうって良いかな、と思って。
伝言板って誰でも見れるじゃない。
口コミとか伝達とか何でも良いから緩く喋りあう場所があると
面白いじゃない」
今どき伝言板。
今だから伝言板。
へぇ、ほぉ。
ぼくは開かない瞼で見てたからよくわからなかったけど
何か面白いんじゃないかなって気配は感じた。
もう、なーちゃん、寝ぼけて、
とママは口を尖らせてどこかに行ったけど
よしよし、上手く行ったぞ、とぼくはまた眠りについた。