キッチンでパパは食器を洗っている。
ママはこたつで、うとうとしている。
ねぇ、パパ。お仕事探しに行かなくていいの?
「だって、せっかく直ぐに失業保険が下りたんだし」
パパはへへへ、と恥ずかしそうに笑う。
ママは
「ほおって置くと一日中テレビ見てるからね。
せめてあたしの休みの時くらい、お外に連れ出さなくっちゃ」
って言って、先ずは引越し先の近所を知ろう!って散歩に出かける。
ということで、ママは毎日出ずっぱりだった。
だから夕飯を食べ終わると、うとうと、が始まる。
去年の2月は二人で出雲に行ってたよね。
なかなか2月は休めないから、って。
「へへへ。今年は大幅に休んでいます」
ザー、と水道から水が流れる音がする。
きっ、っとノブを上げると、パパは換気扇の下の椅子に座った。
「こんなに早く辞めることになるとは思わなかったんだけど
ママは思ってたみたいだね」
ぼくはパパの足元にしゃがむ。
うん。
続く続かない、じゃなくて
危ない、ってよく言ってた。
「ママちゃんは感が鋭い」
よかったよかった、ってパパは笑っている。
こたつでママが、うー、あー、って唸っている。
ちょうどママがつけっぱなしにしてたDVDから歌が流れてくる。
~予報ははずれて、予感は当たった
低い雲から 雪がちぎれた
Wonderful不確かであれ
&Beautiful不自由であれ
ここでいいって君が笑ってくれたら~
大変なことって、確かにこの二人に起きてるみたいなんだけど
あまり実感することはなくて
それはどうしてだろうって思うけど
きっといつも笑っているからかな
ってぼくは思った。