「ねぇ、これ、あってるの?」
「レシピではこうなってたんだけど」
「塩が足りないんじゃない?」
「入れてないもの。レシピに書いてなかったの」
2人は鍋を前にして、うんうん唸っている。
今日は洋風鍋だ!と言って、ママが作った夕飯に
2人で首を傾げている。
「食べたことないものを作ってるからね。
コンソメを使わず、鶏ガラ顆粒だけでどうなるのかと思ったけど
なんかピンとこない。
なんでこれが人気のレシピなんだろう」
やっぱり味見して、自分で決めなきゃダメだな、
とママが言うと
俺なんて色でわかるけどね、とパパが応える。
お、珍しくプロらしいこと言ってる。
感覚ってレシピに書くの難しいんだろうね。
パパの説明通りに作るなんてできないよ、
ふわっとなったら、とか
ジンジンってなったら、とか
よくわかんない
とママは口を尖らせてた。
ぼくが思うにはね、やっぱり1度、本物を知ってくることじゃないかな。
そこから自分で研究していく。
きっとパパが言ってるのはそういう事だ。
パパは本を読んで料理を覚えたことはないらしい。
全部、見て、感じて、学んできた。
大変だっただろうね。
「やっぱり食べたことある物を再現する方向にしよう。
となると、私は母の味なんだけど」
とママが言うと
賛成!俺、お義母さんの味、スキ!
とパパは応えた。