「今年も豊作だ」と言って
ママがサクランボを咥えて庭から戻ってきた。
あぁ。そう言えば、今年もよく咲いてた。
花が散った後、実ができて
それが赤く染まっている。
パパも1つ咥えて、うん、美味しい、って言ってる。
ぼくは要らないよ。種だけ出すとかできないから。
「鳥なんて種ごと食べて
遠くでウンチにして蒔いてるけどね。
なーちゃんは便秘になるから止めときましょう」
ママはモグモグしながら言う。
そうだ。鳥界で話題になってる。
あそこに行くとおやつがあるよ、って。
冬の間はミカンやリンゴを
ママが括りつけていたけれど
今では本物の実が付いた。
それは空を飛ぶ鳥から見えるようにか
赤く光っている。
みんな食べられちゃうんだよね。
でもパパとママは
みんなのおやつだからどうぞ、って笑ってる。
先に摘み取るとかしない。
なんのために育てているのかと思うこともあるけど
鳥が遊びにやって来るのは
ぼくにとっても楽しい事だった。
そのため?
って聞くと、
そうよ、って
2人で笑ってた。