「今朝ね、出勤するときミミちゃんに会ったのよ。
あの子はあっちでもこっちでも
仲良くやってて偉いんだよなぁ」
ママがスマホを取り出して、ぼくに見せる。
ぼくは外の世界を知らないけど
そこは二階の窓から見える場所だ、ってことはわかった。
うちから少し坂を下りた所だ。
「電信柱の陰に居てさ。
声かけたら、ママさんいってらっしゃーい、って。
かわいい奴だ」
うぅーん、とママは身体を揺らす。
誰かを待っていたのかな。
ぼくはぼくの知らない誰かを待つミミちゃんに
少し焼きもちを焼く。
自分から会いに行く人がいるって、いいな。
「この先のお宅の家族に可愛がられてるの。
ミミちゃんはあっちこっちでアイドルだからね。
なーちゃんはあたしとパパちんのアイドルだから」
ママがぼくの顔をぶちゅっと両手で挟んだ。