社会科見学だ、と言ってママはぼくをバックに入れた。
このバックに入るのは2回目だ。
そう、引っ越しの時。
ママは、
ぎえぇ重くなってる、
と言って肩に食い込むストラップを少し持ち上げた。
ぼくはもう、バックの中で方向転換するのも一苦労だった。
久しぶりの外。
自転車はやめとくか、と言ってママは徒歩でお店まで行った。
外の世界はあまり興味がなかったけど
ファスナーを開けてバックから出ると、また部屋だった。
「じゃん。ママの職場です。
あんた、二回目なのよ。
前の家で煙もくもくやった時、来たじゃない」
ぼくがママに拾われたとき
ぼくはノミだらけで
ママは部屋を害虫駆除しなくちゃいけなくなった。
その時の避難先がここだった。
でもぼくの記憶は虚ろで
まるで初めて来たところみたいに感じる。
つまりは、落ち着かない。
うろうろした挙句、恨めしそうにママを見上げた。
ママは、やっぱりだめか、と苦笑いして
またぼくをバックに入れて、家に戻った。