「コロナになってからの時間を改めて感じたのだけど」
ママが神妙に話し始めた。
そうだね。2度目の秋だね、とぼくも応える。
「うちのお店に来てた人が
今年の春に亡くなった、って聞いたんだ。
バトミントンを仲間でやってて
その後の飲み会を楽しみに生きてた
80代の女子だったのだけど」
話を聞くと元気そうだけど。
「元気だったよ。
そりゃ、あちこち痛いって言って
不定期に来てたんだけど
最後に会ったのは近所のパン屋だったんだ。
牛乳買ってくれたりして。
気が付けばそれは
コロナ前だった。
触ったことがある人が亡くなると
自分の一部が無くなった気がするんだよね。
もう誰も私より先に死なないで欲しい。
そうも行かないとはわかっていても
そう思う」
ママはそう言うと
ぼくを触りだした。