ぼくがひっそりと段ボールに入っているときだった。
二人はまだぼくがここに居ることに、気が付いていない。
飛び出したら、驚くかな、ってワクワクしているときだった。
「今のところ、辞めたいんだ」
パパがつぶやいた。
ママは黙ってお茶を飲んでいる。
え。
パパ、辞めるって?仕事?
ぼくのワクワクは、しおしおとしおれ、
出るタイミングを逃した。
「あの時、無理やり決めてきてくれたんじゃないかな、って思ってた」
ママは、ふ、と息を漏らして答えた。
パパは、そんなこと、ないよ、って小声で答える。
「いいよ。そこが合えばめでたしだけど、そうじゃないなら
もう無理している必要はないと思う。
あの時、仕事を決めてきてくれて、ほんとにありがたかった。
母共々、お礼を言います。
やっぱり、働きたいところで働かないと。
仕事をしてる場所って、生活の大半だからね。
ただ、前回みたいに失業保険は下りないよ。
まだ務めて5ヶ月だから。
でもさ、じゃ、あと1ヶ月頑張って、三か月後に支給になって
でも6割しか出なくて、なんてやってるよりは
さっさと動いたらいいと思う。
しかし、だいぶ母がいるときに貯金を崩しちゃったから
できればアルバイトをしながら、時間を作って就職活動をしてほしい。
どう?」
パパは、ほっとしたようにうなずいた。
「と、言うわけで、また昼間はパパとなーちゃんの時間になりますが
そこの段ボールの人、いいですか?」
え?
ばれてたの??
ぼくはゆっくり顔を出した。