「あら、やーね。
それでここのところ機嫌が悪かったの?」
ママは、きっ、と水を止める。
キッチンからぼくを覗き込んでそう言った。
機嫌が悪い、とかそぉいうのじゃないもん。
ぼくは、ぷい、と横をむく。
「だって、まだ捨ててないじゃない」
ママはため息をついて、コタツにやってきた。
だって、ぼくあのキャットタワー、好きなんだよ。
「でもボロボロじゃない。
あんたがめちゃめちゃに爪とぐから」
そうだけど。
「捨てておしまい、って言ってないじゃない。
新しくしようかな、って思ってたの。
でも、高いのよ、あれ。
そうそう買えないから悩んでるの。
使うなら修理しようかな、とか。
要らない部分は取っちゃおうかな、とか」
そうなの?
ぼくは、ただ単にママが
必要ないから邪魔だ、って思ってると思ってた。
ママはコタツにもぐりこみ
つまりはぼくの下に膝が来るようにして
座った。
「あのねー。
パパとなーちゃんは片付けができないでしょ?
ママがジャッジしていかなきゃ
ここゴミ屋敷になっちゃうの。
捨てるのだって大変なのよ。
分解して、袋に詰めて、表に出して、って。
それしないなら新しいものは入れない、ってしないと。
ちゃんと、なーちゃんに確認取ったじゃない。
勝手に捨てたりしないでしょ?」
パパのは勝手に捨てるけど。
キリがないから。
ママはゆっくりお茶をすする。
まぁ、そんなに好きなら保留にしとくわよ。
他にも片さなきゃいけないものあるし。
キランとママの目はひかり、
パパの服が山盛りになったボックスを横目で見ていた。
ぼくは、はぁ、と安心の息を吐きながら
パパ、ごめんね、って呟いた。