「あら。パパから電話だ。
なーちゃんも一緒に出ようよ」
ん?
ぼくは丁度起きたところだった。
いつもはLINEで、仕事終わったよ~、って
連絡してくるパパが、電話をかけて来た。
「何か買ってこようか、って聞いてくるのかもよ。
なーちゃん、何がいいか考えておいて」
と言うと、ママは、はいはいもしもし、と電話に出た。
「ママちゃん、ごめんなさい」
スピーカーにしたスマホからパパの声が聞こえる。
何やら謝っているみたい。
「明日から、お店来ないでいい、って。
クビになっちゃった」
ぼくとママは顔を見合わせる。
少しの間の後、ママは返事を返した。
「かまわないよ。
そろそろかな、と思ってた。
パパちんは未練はない?」
パパは少し黙った後、ほっとしたように
「ない。
もう、もうしません、とか100回紙に書かされるの、ヤダ」
って答えた。
だよね、ってぼくとママは顔を見合わせる。
小学生じゃないんだから、って笑う。
「よく1年、仲良くやってきたと思う。
帰ってからも酔っ払いLINE、よく付き合ってあげたと思う。
もういいよ。
こっちの準備はできている。
会社都合の解雇なのかは聞いてきて。
手続きが変わるから」
電話を切ると、ママはぼくを覗き込んだ。
「さて、なーちゃんはまた明日から
昼間パパと一緒です。
お昼寝できないかもよ?」
ってぼくの額を突っつく。
え~
またか~
って言うと、ママも
またか~
って天井を見上げた。