「ちょっと最近トラさんおかしいと思うんだけど」
ママは心配顔でぼくに話しかける。
そういえば、ぼく最近トラさんに会ってない。
何かあったの?
「うーん。
ほら、朝ジャックとワーワーやってたじゃない。
でも最近ジャックだけなんだよね、うるさいの。
トラさん何も言わないの。
逃げるでもなく、文句を言うわけでもなく
騒いでるジャックにずんずん近づいて
顔付き合わせてるのよ。
耳、聞こえてないのかな」
え?ほんと?
ぼくも心配になった。
「分からないんだけど、人間年齢で考えたら
トラさんたぶん80代じゃないかな。
耳が遠くなっててもおかしくないと思う。
今日なんて呼んだのに振り向かないのよ」
ほら、とママはぼくに写真を見せる。
そこにはトラさんの後姿が写っていた。
ちょっと痩せたような気がする。
「耳も喧嘩して怪我したっていうより
皮膚病で血が出てるんじゃないかな。
ご飯しっかり食べられれば
免疫あがるかしら」
ママはキッチンに移動し、缶詰の数を数えだした。