「ついに出来上がりました」
ジャジャン、とママはスマホを取り出す。
トイレの工事?
終ったの?
よし、見てあげよう、と寝ていたぼくは頭を持ち上げた。
これでも大サービスだからね。寝てたんだから。
そんなぼくにお構いなく、ママは写真をめくる。
あ。パパだ。
そう言えば、沢山の洗濯物とパソコンを持って
自転車でこの暑い中出勤するなんて
ママちゃんかわいそう、ってお休みのパパが送って行ってたっけ。
パパは9月からシフトが変わるからか
夏休みの残りを強制消化なのか
今週は4日もお休みがある、ってママがぶうぶう言ってたな。
あ。大家さんだ。
「そうなの。出来上がったので皆さんに見てもらったんだ。
お隣と下の人も来てくれて。
工事期間は迷惑かけたし。
パパちゃんも含めて」
えへへ、とママは笑っている。
それにしても、ずいぶん広くなったね。
「掃除がしやすくなったよ。
床もタイル柄だけどフラットだし。
目地があると後々黒くなるからね。
壁紙も急遽変更した割にはしっくりきました。
それにしても木工事やると木くずが凄い飛ぶんだね。
午前中は大掃除になっちゃった。
でもお陰でピカピカになったんだけど」
さて、再始動だぞ、とママは腕をまくっている。
コロナのお陰で色んな事に挑戦する1年になったね、なんて
ぼくなりに労うと
さすがなーちゃん、よく見てるわね、なんて逆に褒められた。